造化の三神

造化の三神、最初に世界に現れた三柱の神

造化の三神は『古事記』の日本神話において最初に世界に現れた三柱の神。
天の中心の主とされるアメノミナカヌシ、天照と並ぶ最高神のタカミムスビ、女神であったともされる献身的なカムムスビ。
『日本書紀』においてはクニノトコタチが最初の神とされる。

『記紀』の記述が少ない始まりの神々

最初の三神は自然発生した

『古事記』においてはまず高天原が存在し、そこに神々が自然発生的に誕生する。
『古事記』の冒頭には、「天地初めて発こりし時に高天原に成る神の名はアメノミナカヌシ。次にタカミムスビ。次にカムムスビ。この三柱の神は、皆独神と成り坐して、身を隠したまふ」とある。
独神とは男女の区別がない神様のことだ。

  1. アメノミナカヌシ
  2. タカミムスビ
  3. カムムスビ

一番最初に「アメノミナカヌシ」が誕生

天の中心の主、非常に謎が多い神様

アメノミナカヌシは、「天の中心の主」の意味で、宇宙の中心を表す神である。

色んな神々と同一視されたが、実態は不明

「記紀神話」にほとんど記述がないため観念的な存在と捉えられていたが、中世以降には伊勢の神宮外宮のご祭神・トヨウケと同一と考えられたほか、天の中心を意味することから北極星や北斗七星を神格化した妙見菩薩と習合した。
また古代インドにおける最高神に由来する水天とも同一視され、水天宮のご祭神となっている。

始めは人々の信仰の対象にならなかった

最初に現れた神様であるアメノミナカヌシは、宗教学でいうところの至高神であり、あまり高く遠いところにあるために、人々の信仰の対象とはならなかったが、のちの時代、夜空の中心である北辰(北極星とそれを護る北斗七星)を崇める妙見信仰が伝わると、天の中心ということから妙見とアメノミナカヌシは同一神と考えられるようになった。

次に「タカミムスビ」と「カムムスビ」

「ムスビ」という言葉が持つ意味

タカミムスビとカムムスビの「ムス」は「苔生す」と同じように生成を意味し、「ビ」は古語で「霊」を表す。
「ムスビ」は、一見何もないところから植物の芽が生えてくるように、無から万物を誕生させ育む霊力を表す言葉なのである。

『日本書紀』では別の神が最初に出現

なお、『日本書紀』では、天地の誕生ののちに最初に出現する神様はクニノトコタチ(国之常立神)という別の神様となっている。

タカミムスビとカムムスビの活躍

高天原の司令神と、葦原中国に関わる神

タカミムスビが高天原、カムムスビが葦原中国

記紀神話の中心的な部分は、高天原と葦原中国を舞台にして展開する。
タカミムスビは高天原により多く関わり、カムムスビは葦原中国、特にオオクニヌシの神話で言及される。

タカミムスビ、天照と並ぶ最高神

タカミムスビは神武天皇の祖先

タカミムスビは別名・高木神と呼ばれ、最高神・アマテラスとともに、高天原の支配に関わる神である。
葦原中国へと降臨する天孫・ニニギの母方の祖父にあたるため、つまりタカミムスビは神武天皇の祖先にあたる。

天照や神武のピンチにタカミムスビが駆け付ける

天孫降臨を主導したのは一般的にアマテラスとされているが、これは『日本書紀』第一の一書のみで、『古事記』ではアマテラスとタカミムスビの二神が司令をしているほか、『日本書紀』の本文や異伝ではタカミムスビのみが司令をしている。
こうしたことから、タカミムスビは高天原でアマテラスと並んで重要な神とされていることがうかがえる。
初代神武天皇の東征では、神武天皇に従わない荒ぶる神々が多くいる熊野の地において、一行を導くためにヤタガラスを派遣するなど、アマテラスとともに神武天皇の危機を何度も救っている。

カムムスビ、女神ともいわれる献身的な神様

女性的な側面も持っていた独神

一方のカムムスビは葦原中国の神々に関与する神様である。
葦原中国を開拓するオオクニヌシのピンチに治癒の女神を派遣したほか、オオクニヌシの地上開拓を手助けするスクナヒコナはカムムスビの子とされる。
カムムスビは『古事記』の冒頭の記述では性のない独神とされているが、女神であったとする説もある。

高天原から、出雲系の神々を見守っていた

カムムスビは葦原中国に関与することが多い神であるが、基本的には高天原に座していた。
主に出雲系の神々(オオクニヌシなど)を援助しており、他の神々からは「御祖」と呼ばれていた。

サポートの神

スサノオがオオゲツヒメを殺害してしまったとき、その死体から五穀が生まれ、カムムスビがそれを回収したという。

『日本書紀』では影が薄い

『日本書紀』では出雲系の神々が語られないため、カミムスビはタカミムスビの対偶神として存在するのみで特に説話は記されていない。
やはり、カミムスビは出雲系専門という正確があったようだ。


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