八百万の神様

なぜ、日本は神様が多いのか

海外の一神教の絶対的な神様に対し、多神教の日本には沢山(八百万)の神様が存在する。
日本の神様は恋をし、結婚をし、子を生み、時に過ちを犯す、極めて人間的な存在であった。

日本中、至るところに神様が住んでいる

空山海から、昼や夜の神様まで

日本の神様は「八百万の神々」と形容されるが、この「八百万」とは実際の数ではなく「無数」という意味である。
空に、海に、山に、川に、木に、道に、家にトイレのなかにまで神様がいると古くより日本人は考えてきた。

個性的で人間的な日本の神々

膨大な数の神様が日本の津々浦々にいるならば、当然さまざまな性格の神様がいる。
荒々しくも頼もしい神様、控えめな神様、主導権を持つ神様など、日本に住まう神様は、非常に個性的である。

海外の神は唯一絶対、日本は八百万

一神教と、多神教

キリスト教やイスラム教など、世界的に多くの信者を持つ宗教では、神様はひとりで、絶対的な存在であるとする。こういった宗教のことを「一神教」という。
逆に、日本の神様(神道)は一神教とは異なり、八百万の神様が存在し(多神教という)、また、断じて絶対的な存在などではない、人間的な性格を持っている。

絶対的な神と、人間的な神

一神教の神様は、世界をひとりでつくり上げ、人々に恵みも与えれば、罰も与える。
対して日本の神様は必ずしも「絶対的な存在」ではない。

神様が恋愛や結婚をし、ときに過ちも犯す

伴侶と出会い、恋愛をし、結婚・出産もする。さらには人間同様、時に相手のことを疑うこともあれば、過ちを犯すことさえある。
一神教の神が至高の存在で人間から遠く離れているのに対して、日本の神様は実に人間的な存在であることを表している。

日本の風土が、千差万別の神様を生んだ

日本の自然環境や生業が神々に影響を与えた

日本でこれほど多くの神々が信仰されるようになった理由のひとつに、日本の自然環境や生業が挙げられる。

神様は人間よりは上位の立場に存在

そもそも「神」とはどのような存在を指すのだろうか。
この定義は難しいが、日本語の「神」については、「人々(自分)の生命・生活に影響を与える、人間よりも上位の存在」と定義できる。
神に対する認識の共通項は、人間よりも上位に位置する存在、すなわち人間が好き勝手にできない存在であり、自分の暮らしや生命を左右する存在といえる。
「罰当たり」という言葉があるが、神様に失礼を働く行為も罰当たりであり、これは、人々より神様の方が上位に在ることを意味してもいる。

「神様」とは「自然」と同一の存在

人間の暮らしや生命を左右するとなると、当然、自然環境は大きく関わる。日本では弥生時代以降、稲作などの農耕を主たる生業としてきた。
太陽の恵み、雨、川の流れ、自分たちの思うようにならない自然に対し、畏敬や感謝の気持ちを抱くことになる。
そうした暮らしが自然界のさまざまなものに神を見出すことにつながっていったのではないだろうか。

ご先祖様も神様と同一の存在となる

自然信仰のほかにも、日本の信仰の核となったとされるのが、祖先崇拝だ。
ご先祖様を大切に敬うことは日本人だけではなく、もちろん広く世界の信仰にもみられるものである。
墓参りなどの風習は、キリスト教にも見られるものだが、日本と共通点や類似点が多い祖先崇拝を持つのは、儒教や仏教の影響を受けた東アジア地域である。

ご先祖様を大事にする日本の信仰

氏神、祖先が神様となった

記紀(『古事記』『日本書紀』)神話にはさまざまな氏族の祖先神たちが登場するが、この祖先神を氏神といって神社に祀るようになる。
現在では氏神とは、居住している地域の神社の神を指すようになっており、もともとその土地の神様である産土様と同じ意味で使われている。

引っ越しが滅多になかった時代、氏神が篤く信仰された

かつては、人はその土地で生まれ、成長し、老いていく人生を送ることが多かった。
そのため、産土神がそのままその人や一族を守る存在となり、氏神との区別がなくなっていったのだろう。祖先崇拝の拡大ともいえる。
なお、引っ越しする際は「勧請(かんじょう)」といって、氏神さまと一緒に引っ越しをし、新天地でも氏神さまを祀っていた。

人間と神様との繋がり

祖先が神様、子孫だけが人間に変化

日本では、古くは人間に神が依りつくことがあった。また先祖が神であるとする一族もいた。
つまり、間と神の間に連続性があると思われていたのだ。

死後に神様になった人々

そうしたことから、歴史上、影響力があった人物や優れた人物が死後に神様として祀られることにつながっていったのだろう。
坂上田村麻呂、和気清麻呂、安倍晴明、菅原道真平将門、崇徳上皇、織田信長豊臣秀吉徳川家康、明治天皇など、多くの者たちが死後に神となっていった。

現代もなお生まれ続ける神様たち

人々の“心”が新たな神様を生む

日本の神様は神話の中の存在にとどまらない。
山や川、草木や岩に至るまであらゆる自然物に神々が宿るだけでなく、日常生活の道具でさえ、時が経てば神が宿るとされる。
また日本語の「神」は、仏教をはじめとする、海外からもたらされた文化や宗教の影響を受けている。
そうして新たな神々が誕生していく。
日本の神様は、人々の願いや文化に影響を受けながら、今も増え続けている。


↑ページTOPへ