エビス神

えびす神、海から来訪する福の神

えびす(ゑびす)神、当記事では視覚的な見やすさから「エビス」のカタカナ表記で統一する。

3系統あるエビス信仰

外界から来訪したモノを「エビス」と呼ぶ

クジラなどが漂着してもエビスとされた

エビスとは、海から恵みをもたらす神のことをである。
エビス神とされるのは主に三柱で、ヒルコ、スクナヒコナ、コトシロヌシが存在する。
「エビス」には外から来るもの、辺境のものという意味があり、浜に流れ着く漂着物や打ち上げられたクジラなども「エビス」と呼ばれ、豊漁をもたらす神霊として信仰対象になっていた。

ヒルコ、兵庫県西宮市に漂着した神

ヒルコは、イザナギとイザナミの間に最初に生まれた神だが、不具の子だったため(『日本書紀』では3年経っても足が立たないため)、葦船に乗せられ流し捨てられた。
のちに、ヒルコは現在の兵庫県西宮市のあたりに流れ着いたという伝承が生まれ、西宮神社のご祭神となることになった。

スクナヒコナ、常世の国から来訪した神

スクナヒコナは、国づくりを行うオオクニヌシを手伝うために、常世の国から訪れた神様だ。
手に乗るほどの小さな体ながら、多くの知恵を持ち、地上の人々と家畜のために病気の治療法を定め、鳥や獣、虫による害を除くためのまじないをつくり、その恩恵は今に至るまで人々に行き渡ったという。

コトシロヌシ、いつも釣りをしていた漁業の神

オオクニヌシの息子であるコトシロヌシもエビス神とされる。
アマテラスが地上世界の統治をするためにオオクニヌシのもとにタケミカヅチを派遣した。オオクニヌシは出雲の稲佐の浜で武神と会うと、国譲りの回答を保留して「私の子のコトシロヌシが答えるでしょう」と返事をした。
その時、コトシロヌシは美保の埼に釣りに出かけていた。
コトシロヌシを連れてきて、訪ねてみると、コトシロヌシは「恐れ多いことです。国は天つ神の御子に奉りましょう」とだけいうと、乗っていた船を傾けてその中に隠れてしまったとされる。

漁業の神が「市の神」に

都市部において商売繁盛を願い信仰された

もともとは漁業の神として信仰されたエビス神だが、信仰が都市部にも広がっていくなかで、市の神としても信仰されるようになった。(漁業においても市は常に開かれるモノである)
エビス神の信仰が盛んになると、「エビス講」と呼ばれる行事が行われるようになった。

エビス講、留守番にやって来た神さま

これは旧暦10月に繁盛を祈願する行事である。
エビス講の起源には諸説あるが、エビス神と関係が深いオオクニヌシに由来するとされる。
10月のことを神無月と呼ぶが、これは旧暦10月に全国の神々が出雲に集まり、縁結びの会議を行うためとされる。
そのため、出雲では10月を神無月ではなく神在月と呼ぶ。
旧暦10月に土地を守護する神々がいなくなってしまうことになるが、そこで留守番をする神が、外来からやってきたエビス神とされた。
留守を守るエビス神を慰霊し、感謝するためにはじまったのがエビス講とされる。


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