スクナヒコナはオオクニヌシに協力し、医療や農耕を伝えた生産の神様。出雲国の開発と産業を発展させた。酒・温泉の神でもある。掌に乗るほどの小さな身体であった。エビス神の一柱でもある。
スクナヒコナは、『古事記』では一番最初に現れた造化の三神の一柱・カムムスヒの子であり、手指の間からこれ落ちたとされる。
『日本書紀』ではスクナヒコナの父はタカミムスビ(高木神)となっている。
オオクニヌシがミソサザイ(鳥の一種)の羽を着た小さな神を掌でもてあそんでいたところ、飛びついて噛み付いたという。
小ささが強調されている神である。
スクナヒコナは、『古事記』では少名毘古那神、『日本書紀』では少彦名命、『先代旧事本紀』では天少彦根命、『出雲国風土記』では須久奈比古命、『播磨国風土記』では小比古尼命と表記されている。他にも須久那美迦微、少日子根などと表記される場合がある。
カムムスヒは生産の神様として知られる。
『古事記』には、海の向こうから天乃羅摩船(ガガイモの殻の船)に乗り、蛾の皮をまとった姿でやってきて、手に載るほど小さかったとある。
スクナヒコナはオオクニヌシの国づくりを補佐し、出雲国の開発と産業を発展させた。
国づくりが一段落すると栗の茎にのぼり、その弾力を利用して常世の国へと飛び去っていった。
また、熊野から去ったとする記述もある。
オオクニヌシがダイコク様とされたことから、スクナヒコナはエビス様とされる。
エビスとは、外界からやって来て福を届けてくれた神様のことをいうため、スクナヒコナもエビス様として信仰された。
オオクニヌシとスクナヒコナの国づくりは『古事記』や『日本書紀』、また各国の『風土記』などさまざま書に記されている。
『日本書紀』では、地上の人々と家畜のために病気の治療法を定め、鳥や獣、虫による害を除くための呪いを作り、その恩恵は今に至るまで人々に行き渡っているとされる。
また「伊予国風土記逸文」には、あるときスクナヒコナが気を失ってしまい、これを見たオオクニヌシが大分県の別府温泉から愛媛県の道後温泉まで湯を引き、この湯に浸したところ、しばらくしてスクナヒコナは蘇生して目を覚ましたとある(気を失ったのはオオクニヌシで湯を引いたのがスクナヒコナとも読める)。
この説話から、二神は温泉の神様としても信仰されている。
さらに『日本書紀』には、酒の神様としての記述もある。
病気の治療、呪術、温泉、酒と、これらに共通しているのは、古代にはすべてが医療に関わる分野だったということだ。
医薬の世界に非常に関係の深い神様であり、こうしたことから病気平癒や無病息災の神様として信仰されている。