スクナヒコナ 医療と農耕の神様

スクナヒコナ、医療や農耕を伝えた神様

スクナヒコナはオオクニヌシに協力し、医療や農耕を伝えた生産の神様。出雲国の開発と産業を発展させた。酒・温泉の神でもある。掌に乗るほどの小さな身体であった。エビス神の一柱でもある。

オオクニヌシに協力した小さな神様

造化の三神の直系の神様とされる

スクナヒコナは、『古事記』では一番最初に現れた造化の三神の一柱・カムムスヒの子であり、手指の間からこれ落ちたとされる。
『日本書紀』ではスクナヒコナの父はタカミムスビ(高木神)となっている。

子供よりも小さな神様だった

オオクニヌシがミソサザイ(鳥の一種)の羽を着た小さな神を掌でもてあそんでいたところ、飛びついて噛み付いたという。
小ささが強調されている神である。

スクナヒコナとオオクニヌシの想像図(マンガでわかるシリーズ Vol.2 古事記 サンエイムック 04 出雲の国譲り 千葉きよかず より引用)

書物によって表記に差異がある

スクナヒコナは、『古事記』では少名毘古那神、『日本書紀』では少彦名命、『先代旧事本紀』では天少彦根命、『出雲国風土記』では須久奈比古命、『播磨国風土記』では小比古尼命と表記されている。他にも須久那美迦微、少日子根などと表記される場合がある。

「生産」の神様、出雲国を発展させた

ガガイモの殻の舟に乗ってやって来た

カムムスヒは生産の神様として知られる。
『古事記』には、海の向こうから天乃羅摩船(ガガイモの殻の船)に乗り、蛾の皮をまとった姿でやってきて、手に載るほど小さかったとある。

ガガイモの殻の舟に乗っているスクナヒコナの想像図(マンガでわかるシリーズ Vol.2 古事記 サンエイムック 04 出雲の国譲り 千葉きよかず より引用)

出雲の発展を見届けた後、いずこかへ飛び立った

スクナヒコナはオオクニヌシの国づくりを補佐し、出雲国の開発と産業を発展させた。
国づくりが一段落すると栗の茎にのぼり、その弾力を利用して常世の国へと飛び去っていった。
また、熊野から去ったとする記述もある。

エビス神の一柱とされる

オオクニヌシがダイコク様とされたことから、スクナヒコナはエビス様とされる。
エビスとは、外界からやって来て福を届けてくれた神様のことをいうため、スクナヒコナもエビス様として信仰された。

スクナヒコナが遺した恩恵

病気の治療法と、害獣への対策

オオクニヌシとスクナヒコナの国づくりは『古事記』や『日本書紀』、また各国の『風土記』などさまざま書に記されている。
『日本書紀』では、地上の人々と家畜のために病気の治療法を定め、鳥や獣、虫による害を除くための呪いを作り、その恩恵は今に至るまで人々に行き渡っているとされる。

温泉の効能を発見、人々に伝える事に成功

また「伊予国風土記逸文」には、あるときスクナヒコナが気を失ってしまい、これを見たオオクニヌシが大分県の別府温泉から愛媛県の道後温泉まで湯を引き、この湯に浸したところ、しばらくしてスクナヒコナは蘇生して目を覚ましたとある(気を失ったのはオオクニヌシで湯を引いたのがスクナヒコナとも読める)。
この説話から、二神は温泉の神様としても信仰されている。

酒の神様でもあり、医療に広い範囲で精通していた

さらに『日本書紀』には、酒の神様としての記述もある。
病気の治療、呪術、温泉、酒と、これらに共通しているのは、古代にはすべてが医療に関わる分野だったということだ。
医薬の世界に非常に関係の深い神様であり、こうしたことから病気平癒や無病息災の神様として信仰されている。

スクナヒコナを祀る主な神社

  • 酒列磯前神社(茨城県那ひたちなか市磯崎町)
  • 大洗磯前神社(茨城県東茨城郡大洗町)
  • 札幌神社(札幌市中央区宮ヶ丘)
  • 大神神社(奈良県桜井市三輪町)
  • 天神社(奈良県奈良市高畑町)
  • 神田神社(東京都千代田区)
  • 布多天神社(東京都調布市)
  • 穴澤天神社(東京都稲城市)
  • 阿豆佐味天神社(東京都西多摩郡瑞穂町)
  • 五條天神社(東京都台東区上野公園)
  • 五條天神社(京都府京都市下京区)
  • 少彦名神社(大阪市中央区道修町)
  • 生根神社(大阪府大阪市西成区)
  • 大江神社(大阪府大阪市天王寺区)
  • 桑津天神社(大阪府大阪市東住吉区)
  • 服部天神宮(大阪府豊中市)

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