日本のしきたり

日本人のしきたり

しきたりの多くは庶民のあいだに俗信として広がった。
庶民の習わしとして、主に口伝で受け継がれたしきたりは地域によって多様な姿を見せる。
縁起とはもとは仏教の「因縁生起」の略語で、物事の由来を述べたモノを指したが、江戸時代に「霊験あらたかな効能」がうたわれた。
産湯、七五三、成人、結婚など人生の通過儀礼としての「儀式」の側面もある。

主な年中行事

どんと焼き 1月15日 小正月
1月1日からの正月行事の「大正月」に対して旧暦における一年で最初の「満月」を祝う風習から「小正月」として一部地域で祝われた。
【どんと焼き】正月の注連飾りや書き初めなどを刈り取り後の田んぼなどに積み上げて燃やし、その煙を浴びる事で一年間を無病息災で過ごせると云われる行事。
どんと焼きの由来は平安時代の宮中行事・左義長から各地に伝播したと云われる。
元服 1月15日 成人の日
元服とは、奈良時代以降に男子が成人として認められる通過儀礼。
女子の「裳着」は平安から安土桃山時代の儀式。
江戸時代以降、武家・庶民の間で18歳以上の男女ともに「元服」の儀式を経て「おとな」とされた。
豆まき・恵方巻 2月3日 節分
豆まきは室町時代の後期に成立した。
本来は年に4回あり、立春・立夏・立秋・立冬の前日を「節分」と言い、それぞれの季節の終わりの日を指した(現在では旧暦で一年の最初の日とされる立春の前日のみ)。
煎った大豆を巻く事で、季節の変わり目にやって来るとされる鬼(邪気)を追い払う儀式を行う。
古くは「豆打ち」といい、武家の間では縁起をかつぎ「勝栗を打つ」とも云われた。
恵方に向って食べると縁起がいいとされる恵方巻は大正から昭和初期に掛けて関西から伝播した。
梅花祭など 2月下旬 梅見
梅が中国から日本に入ったのは奈良時代と云われ、紅梅は平安時代に渡来。
香る梅の花はよく歌人に詠まれ、庶民を梅を楽しむようになった。
梅見祭りとしては北野天満宮の御祭神・菅原道真の命日にあたる25日の梅花祭がよく知られる。
雛祭り 3月3日 上巳の節句
桃の節句の雛祭りの雛人形は、乳幼児死亡率の高かった平安時代、紙で作った形代に厄災を乗せて川へ流す「流し雛」の儀式に由来する。
江戸時代になると、女子に流行した「人形遊び」とこの儀式が結びつき全国に広がった。
春のお彼岸・墓参り 3月18〜24日
年2回の真西に太陽が沈む春分と秋分=お彼岸を中日とした7日間(前後3日間)に先祖の墓参りをする事は、仏事として縁起の良いモノとされた。
西方浄土にいる先祖に近づく事が出来る日だと云われている。
お花見 4月上旬
花見は嵯峨天皇(786-842)が桜の下で宴を催したのが起源とされる。
山桜を花見として興ずる風習は平安時代以降で、平安時代には貴族たちによって催されていた。
後に武家社会にも花見は受け継がれ、江戸時代には庶民にも普及、広く定着した。
平安時代の『古今和歌集』以降、桜の美しさを詠んだ歌は数多く残されている。
なお、現在の花満開となるソメイヨシノは江戸時代に人為的に作出されたもの。
茶摘み 5月2日 八十八夜
「夏も近づく八十八夜」で始まる茶摘みの光景を歌ったわらべ歌は、かつて誰もが口すさんだ歌だという。
茶はもとは奈良・平安時代に遣唐使たちが中国から持ち帰ったとされるが、本格的な茶の栽培がなされたのは臨済宗の開祖・栄西禅師が著した『喫茶養生記』から発展した。
明恵上人が栄西から茶の種を譲り受け、宇治茶の基礎を作ったとされる。
鯉のぼりと兜 5月5日 こどもの日・端午の節句
端午の節句はもともとは男女問わず子供の成長を祝うものであったが、「菖蒲の節句」とも呼ばれ、「尚武」と同じ読みである事から、鎌倉時代に男の子の節句とされた。
内飾りとしてのかぶとは男子としての強さへの祈り、外飾りとしての鯉のぼりは江戸時代に関東の風習として広がったが、立身出世を願う意味が困れている。
五色の短冊と笹竹 7月7日 七夕
一年に一度、織姫と彦星が再開できるという七夕伝説。
笹竹に願いを書く五色の短冊は中国の五行思想に基づき「赤(礼)・白(義)・青(仁)・黄(信)・黒(智)」を表し、色に込められた意味に関する願いを記すと叶うと云われる。
ウナギの蒲焼 7月23日 土用の丑
土用の丑の日に「う」が付く物を食べるといいとされ、現代でも滋養強壮に効く鰻を食べる習慣は残っている。
これは江戸時代に平賀源内の発明、ないしは大宣伝によるモノが始まりであった。
「本日土用の丑の日」という看板を店の前に出した事で評判になったと云われる。
踊りや送り火 お盆 8月13〜16日
先祖の霊を迎えて供養する行事で、仏教では「盂蘭盆会」「精霊絵」ともいう。
「盆の入り(13日)」の夕方になると家の前で迎え火を焚き、仏壇の前などに盆棚を設けて先祖を迎える。
お盆の終わる15日の夕方、または16日の朝には、先祖の霊を送り出す送り火を焚く。
四十九日を過ぎた死者が初めて迎えるお盆を「新盆」という。
菊酒 9月9日 重陽の節句
菊酒は歳を重ねること、長寿への願いを込めて振舞われてきた。
特に江戸時代、重陽の節句の際、武家が登城し、その祝儀を菊酒で祝った事から庶民へと広がった。
菊の花に盃の花札は、この菊酒を表したとされる。
中秋の名月 9月中旬〜10月上旬 十五夜
旧暦の秋は初秋(7月)・中秋(8月)・晩秋(9月)と呼ばれ、その中秋の満月を楽しむ習慣が平安時代以降に広まった。
月に詩情を覚える史料として藤原道長(『小右記』)や清少納言(『枕草子』)にも記されている。
秋の野遊び 10月下旬ごろ 紅葉狩り
秋の野遊びは鎌倉時代以降の「紅葉狩り」にその由来があり、能楽で鬼女を退治する『紅葉狩』も有名。
10月まで夏日が続く現代では遅くずれ込み11月中旬以降に紅葉シーズンとなっている。
明治節 11月3日 文化の日
文化の日は明治天皇の誕生日。
「天長節」と呼ばれ、大正時代に「明治節」となり、戦後の1948年に現在の「自由と平和を愛し、文化をすすめる」趣旨の祝日となった。
この時期に日本中の多くの学校では文化祭が行われる。
千歳飴 11月15日 七五三
子供が大人になるまで生きる事が難しかった江戸時代、「長生き」の縁起物として棒状の飴が神社の門前で売られた風習が今も残る。
新嘗祭 11月23日 勤労感謝の日
新嘗祭は宮中行事の一つ。
その年の収穫に感謝して新穀を神様にお供えし、来年の豊穣を願う行事。
現代でも「稲作」を中心として、様々な生産(実り)を寿ぐ文化が宿っている。
大掃除 12月13日 煤払い
13日の煤払いの後に、歳神を迎える為のさらに縁起の良い行いが大掃除だ。
これによって一年の穢れや厄災が取り除かれる。
ゆず湯 12月22日頃 冬至
冬至は一年で最も夜が長い日。
香りの強いゆず湯は江戸時代以降、邪気を祓い「風を引かずに冬を越す」願いが込められている。
注連飾り 12月28日 正月飾りの準備
注連縄は、神域と現世の結解を表す神道の縁起物。
旧年28日までに玄関先に飾り、新年7日に外し、15日の小正月、どんと焼のときに焼く。
除夜の鐘 12月31日 大晦日
鎌倉時代以降に広まる除夜会。
梵鐘を108回衝く意味は人の煩悩の数説もあるが、12カ月、二十四節気、七十二候の総和説もある。

五節句

五節句は重要な年中行事の日として、江戸時代に制定され公的な行事祝日となった。
帰趨を縁起の良い「陽」の数字とする中国から伝わった習わし。

  • 人日の節句 1月7日
  • 上巳の節句 3月3日
  • 端午の節句 5月5日
  • 七夕の節句 7月7日
  • 重陽の節句 9月9日

雑節

農業を営む人々が、気候の異なる中国由来の暦では十分に季節の変化を掴めないと、独自に造ったのが雑節である。
古くからの日本人の暮らしに溶け込み、年中行事や物忌みとも深く関わっている。
雑節は日本独自のモノではあるが、旧暦に基づく。

  • 節分 2月3日頃
  • 八十八夜 5月2日頃
  • 入梅 6月11日頃
  • 半夏生 7月2日頃
  • 二百十日 9月1日頃
  • 二百発か 9月11日頃
  • 彼岸 春分・秋分を挟んだ各7日間
  • 社日 立春・立秋の前後
  • 土用 立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間

色んな日本のしきたり一覧

正月行事のしきたり
初日の出、初詣、門松、しめ飾り、年男、若水、鏡餅、おとそ、おせち料理、雑煮、お年玉、書き初め、初夢、七草がゆ、鏡開き、小正月、左義長、藪入り
年中行事のしきたり
節分、初午、針供養、雛祭り、お彼岸、花祭り、八十八夜、端午の節句、衣替え、七夕、土用の丑の日、お盆、盆踊り、お月見、重陽の節句、恵比寿講、酉の市、年の市、除夜の鐘、年越しそば
結婚のしきたり
婚姻、見合い、仲人、結納、神前結婚式、三三九度、披露宴、お色直し、引出物、里帰り
懐妊・出産のしきたり
帯祝い、へその緒、お七夜、赤飯、お宮参り、お食い初め、初誕生祝い
祝い事のしきたり
七五三、十三参り、成人式、還暦の祝い、長寿の祝い、地鎮祭、棟上式
贈答のしきたり
中元、歳暮、贈答品の包装、水引、のし、贈答品の表書き
手紙のしきたり
手紙と葉書、表書き、裏書き、頭語、結語、時候の挨拶、年賀状、暑中見舞い、手紙の禁忌言葉
葬式のしきたり
末期の水、死装束、北枕、通夜、葬式、焼香、戒名、位牌、お布施、出棺、香典、忌中、忌明け、精進落とし、年忌法要
縁起のしきたり
六曜、おみくじ、神輿、縁日、厄年、七福神、お百度参り、達磨、招き猫、絵馬、手締め、清めの塩、鬼門

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