マレーシア連邦成立に伴う地域対立を乗り越えた東南アジア5カ国が、紛争の平和的解決などを掲げて、地域協力機構を結成した。
1957年にイギリスから独立したマラヤ連邦は、イギリスの保護地域であるシンガポールとボルネオ島北部を加えた新連邦の結成を目指した。
このうち、石油利権を守りたいイギリスの反対で除外されたブルネイを除く地域は63年にマレーシア連邦となる。
しかし、この動きには、インドネシアが自国の包囲網を形成するものだとして反発した他、フィリピンはサバ州の領有を主張して対立した。
このマレーシア紛争(サバ州領有問題)はフィリピンとインドネシアの政権交代で鎮静化するが、緊張を経験した3国は、危機の再燃を避けるべく地域協力機構の設立を画策する。
タイと、65年にマレーシアから独立したシンガポールを加えた五カ国で、67年に東南アジア諸国連合(ASEAN)を結成したのである。
2015年末にASEAN経済共同体(AEC)を発足させるなど、現在ではEUに次ぐ地域統合の成功事例となったASEANだが、発足当初は経済・社会・文化的発展の為の地域協力機構という緩やかな結束だった。
マレーシア紛争で生まれた相互不信も残っており、当面は外相会談などで対話を重ねて相互理解を深める事に重点が置かれていた。
なお、加盟国がいずれも親米反共政権である事から、当初は北ベトナムへの対抗という側面もあったが、その後、米中接近といった国際環境の変化に応じて、地域の自主独立傾向を強めていく。
さらに、76年から開催されたASEAN首脳会談などで政治協力を深め、紛争の平和的解決や内政不干渉といったASEANのアイデンティティが確立されていった。
そして、冷戦終結を挟んで、東南アジア10カ国が参加するASEAN10へと発展したのである。
インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス