大奥には、将軍の奥さんである正室や側室がいて「世継ぎを産む」のが仕事であったといえる。
では、それ以外の女性たちにはどんな役割があったのか。
最上位から順に、上臈御年寄(じょうろうおとしより:御上臈)、小上臈、御年寄、御客会釈(おきゃくあしらい)、中年寄(ちゅうどしより)、御中臈(おちゅうろう)、御小姓、御錠口(おじょうぐち)、表使(おもてづかい)、御次(おつぎ)、御右筆(ごゆうひつ)、御切手(おきつて)、御伽坊主(おとぎぼうず)、呉服の間(ごふくのま)、御広座敷(おひろざしき)。
ここまでが、将軍や御台所(みだいどころ)に目通り出来る「御目見以上」の奥女中である。
「御目見以下」は、御三の間(おさんのま)、御仲居(おなかい)、御火の番(おひのばん)、御茶の間(おちゃのま)、御使版(おつかいばん)、御末(おすえ)、御犬子供の順になる。
ちなみに、御犬子供は無給の雑用係で、大奥の食べ残しを食べるからそう呼ばれたという。
また、あまり知られていないが、大奥には男性職員もいたという。
大奥の警備や女中の任免などの事務処理を請け負う「広敷役人」である。
上記の中で、大奥きっての権力者だったのが「御年寄」である。
大奥の一切を取り仕切り、将軍の側室の選定にも関与している。
その際、彼女たちは、自らの権力を増す為、もっぱら自分の息の掛かった娘を推薦した。
よって、どんな美人であっても、御年寄に取り入る事が出来なければ、将軍に見初められる機会は無かった。
「御中臈」は、将軍や御台所の身辺のお世話をするのが本来の仕事だが、この御中臈の中から、御年寄が娘を選んで、将軍の側室に進めていた。
そのため、御中臈になるには、若くて美人で頭の良い女性ばかりであった。
一方、御年寄よりも役職が上で、収入も高いのに、政務には殆ど関わらなかったのが「御上臈」である。
御上臈のほとんどは、御台所の輿入れに一緒に着いてきた京都の公家の娘であり、「姉小路」「飛鳥井」などと生家の名で呼ばれ、大奥では別格とされていた。
大奥は、徳川将軍家の世襲制を存続させるために作られた施設である。
将軍の側室は、御中臈の中から選ばれるのが普通だ。
しかし、その御中臈も30歳になると「お褥御免(おしとねごめん)」といって、側室としての役割を辞退する。
十一代将軍の徳川家斉が特に、この大奥を気に入っていたといわれ、男の子が28人、女の子が27人の、計55人もの子供がいた。
こうなってくると、将軍の子供たちの養子先や嫁ぎ先を決める老中は大変であった。
江戸時代、家督を継ぐのは嫡男であり、嫡男以下の子供は分家を立てるか、養子として家を出ていったが、これは将軍家でも例外ではなかった。
そのため、将軍家の子供は、半ば押し付けられるような形で、全国の大名の下へ送られた。
一方、将軍の姫君たちの場合は、大名家に嫁ぐのが一般的だった。
諸大名と血縁関係を結んで絆を強めようという政略結婚である。
しかし、将軍の娘ともなると、それを迎え入れる大名の方は大変だった。
姫君用に新たな御主殿を建てたり、姫と共にやって来る御付きの女中も抱えなければならないのだ。
御付き女中の中には、将軍家の威光をやたら振りかざす者もいたから、将軍家の姫が嫁いで来る事は、名誉でもあるが、同時に厄介な事でもあった。
将軍や御台所に目通り出来る「御目見以上」の奥女中。
上臈御年寄(御上臈) (じょうろうおとしより) |
奥女中の最高位(ただし、権力はない)。 御台所の普段の話し相手を担当する。 公家出身者が多い。 |
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小上臈 (こじょうろう) |
上臈の見習い |
御年寄 (おとしより) |
大奥きっての権力者。 奥向きの万事を差配し、表の老中に匹敵する。御老女ともいう。 |
御客会釈 (おきゃくあしらい) |
大奥での将軍及び御家門方(徳川家の一族)の接待役。 |
中年寄 (ちゅうどしより) |
御台所付きのお年寄りの代理役。 御台所の毎日の献立を指示し、毒見役も務める。 |
御中臈 (おちゅうろう) |
将軍や御台所の世話役。 将軍のお手つきは側室となる。 |
御小姓 (おこしょう) |
御台所の側近に仕え、煙草や手水の世話をする少女。 |
御錠口 (おじょうぐち) |
大奥と中奥との境にある「御錠口」と管掌し、中奥との取次ぎ役を務める。 |
表使 (おもてづかい) |
大奥の外交官。 大奥の一切の買い物を担当し、広敷役人を応接する。 |
御次 (おつぎ) |
道具や献上物の持ち運び、対面所などの掃除、召人の斡旋など。 |
御右筆 (ごゆうひつ) |
文書係。 外部への進物などについては御年寄の指示に従う。 |
御切手 (おきつて) |
「七つ口」(大奥の出入り口、この先は男子禁制)から出入りする人々(女中の親・親類、女中の使用人など)の改め役。 |
御伽坊主 (おとぎぼうず) |
50歳前後の剃髪姿で、将軍の雑用係。将軍の命を受けて、中奥への出入りが許された。 |
呉服の間 (ごふくのま) |
将軍と御台所の服装の裁縫を司る。 |
御広座敷 (おひろざしき) |
大奥御用の庶務係。 |
将軍や御台所に目通り出来ない「御目見以下」。
御三の間 (おさんのま) |
御三の間という部屋の名が付いた職名。御台所の居間の掃除・雑用係。 |
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御仲居 (おなかい) |
御膳所係 |
御火の番 (おひのばん) |
昼夜を通して各局・女中の部屋を巡回し、火の元を注意する役。 |
御茶の間 (おちゃのま) |
御台所の湯茶を調進する役。 |
御使版 (おつかいばん) |
代参のお供や、文書・進物の受け取り、広敷役人へ渡す役 |
御末 (おすえ) |
掃除、風呂・御膳所用の水くみ、代参の供、大奥内での駕籠かきなど |
御犬子供 | 御錠口から御三の間までの間の雑用係 |