秦の中国統一
秦の中国統一と中央集権体制
始皇帝の強大な権力を裏付けとして秦が中国支配体制を確立した。
後に2000年以上にわたり維持された中国の統治システムは、秦の始皇帝によって確立したものだった。
秦朝そのものは短命に終わってしまうが、この秦を模範とした漢は、長期政権を築く事に成功する。
中国初の統一王朝秦と始皇帝
「戦国の七雄」といわれた強国のうち、西洋に位置した秦は、商鞅(しょうおう)らの改革(変法)などにより富国強兵に成功していた。
そして政王の代に他の6国を滅ぼし、紀元前221年に、史上初めて中国統一を果たした。
統一を遂げた政王は都を咸陽(かんよう)に定め、自ら皇帝(始皇帝)を称するようになった。
国内統治は、郡・県を基本行政単位とし、長官として中央から官僚を派遣する郡県制を適用し、直接統治による強力な中央主権体制の確立を推進した。
また、宰相李斯(さいしょうりし)を用いて焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)などの思想統制を行った他、行政や徴税の円滑化の為に文字、度量衡(どりょうこう:長さ、量、重さ)、貨幣、車軌(しゃき：車軸の長さ)を統一した。
さらに、異民族である匈奴(きょうど)の侵入を防ぐ為、戦国時代の諸国が建設した長城を強化・延長し、万里の長城を築いた。
始皇帝が誇っていた威光の強さ
始皇帝は自らの威光を全国に知らしめる為、5回に渡る巡行を行ったほか、咸陽には壮麗な宮殿を建設した。
また、後年始皇帝の陵墓付近で発見された兵馬俑坑(へいばようこう)からは、数千体もの兵士や軍馬の桶(副葬品)が発見され、改めて当時の始皇帝の威勢が示される事となった。
しかし、前210年に始皇帝が没すると、過酷な支配に対する民衆の反感が高まりを見せ、陳勝・呉広の乱(ちんしょう・ごこう)を機に反乱が全国に広がり、前206年に秦は滅亡した。
劉邦が秦末の動乱を制し、漢が成立
秦末の動乱の中、規則出身の項羽(こうう)が一度は天下を手にするが、農民出身の劉邦(りゅうほう(高祖))が垓下の戦い(がいかのたたかい)で項羽を破り、前202年に漢王朝(前漢)を建てた。
前漢は第7代武帝の時代に最盛期を迎える。
武帝は匈奴を挟み撃ちする為、大月氏(だいげつし)や烏孫(うそん)に使者を派遣するなど、西域を重視した他、南越(なんえつ)や衛氏朝鮮(えいしちょうせん)を滅ぼして領土を拡大した。
また、これらの大遠征によって財政が圧迫されると、塩、鉄、酒の専売、均輸法(きんゆほう)や平準法(へいじゅんほう)の制定などにより財政難を克服しようとした。
政争によって、漢の威光も衰えていく
しかし、武帝の死後は、大土地所有者が豪族となって勢力を伸ばす一方、朝廷では外戚(がいせき)と宦官(かんがん)の政争が続くなど、漢の政治経済は揺らぎ始め、西暦8年、外戚の王莽(おうもう)が帝位を奪って新(しん)を建て、漢王朝は一旦滅亡する。
秦の中国支配 中央集権体制
周が封建制を確立、しかし戦乱で崩壊
中国古代の王朝である殷(いん)は、大邑(だいゆう：都市国家の事)の連合体であった。
一方、殷に変わった周(しゅう)は、封建制による支配体制を確立した王朝であった。
周の封建制は、一族や功臣(こうしん)、有力氏族の長を世襲の諸侯とし、封土を与えて統治を任せる支配制度であり、支配階級は血縁関係を基にした氏族制(しぞくせい)によって結ばれていた。
しかし、春秋・全国時代になると、諸侯は次第に氏族制に囚われる事無く、実力のある者を官僚に起用するようになった。
また、この頃になると農民も氏族の枠に縛られず、家族単位で農業を営むようになり、封建制は崩壊に向かうようになったのである。
始皇帝が目指した強大な中央集権体制
戦国時代の動乱を制し、初めて中国の統一を果たした秦の始皇帝は、全国を直接支配する強力な中央集権国家の建設を目指した。
朝廷と呼ばれる中央政府には軍事や行政の官僚制度を整え、地方は郡、県、郷、里といった従属関係にある単位に分け、郡と県には直接中央から官僚を派遣して治めさせる群県制を適用した。
一時修正が入るも、後に始皇帝制に回帰
秦の滅亡後に中国を再統一した漢の高祖(劉邦)は、強引な中央集権化が秦の滅亡を招いたと考え、比較的緩やかな中央集権体制を執る事を志した。
それは、郡県制と封建制を併用する郡国制で、都周辺は郡県制とし、地方には王国を築いて一族や功臣を諸侯王として、朝廷が間接的に統治するものであった。
しかし、前1545年の呉楚七国の乱(ごそしちこくのらん)と呼ばれる諸侯王の反乱が平定された後は、諸侯の力は次第に衰え、武帝の時代には郡県制が復活した。
これにより、皇帝に権力が集中する中央集権国家が成立した。
現代まで続く中国の中央集権体制
秦代から漢代にかけて確立した皇帝を頂点とする政治・社会制度は、その後2000年以上に渡り中国を統治する支配制度となっている。