スサノオ

スサノオ

スサノオ(スサノオノミコト)は、日本神話に登場する神である。
地上に降り立ったアマテラスの弟神で、イザナギの子である。
高天原を追放された後、出雲国で大蛇を討伐した後、妻を娶り、出雲の地を開拓して繁栄に導いた。
スサノオから六代目の子孫がオオクニヌシだ。
『日本書紀』では素戔男尊、素戔嗚尊等、『古事記』では建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)、須佐乃袁尊、『出雲国風土記』では神須佐能袁命(かむすさのおのみこと)、須佐能乎命などと表記する。

須佐之男命(歌川国芳画)

荒ぶる力を持った神

父・イザナギの禊によって生まれた

父であるイザナギが黄泉の国から帰還し禊(罪や穢れを落とし自らを清らかにする事)を行った際、姉のアマテラスと弟のツクヨミが左右の目を洗った時に生まれた。
それに対し、スサノオは鼻、或いは口を漱いだ時に生まれたという。
この事からしても明らかに他の二柱の神とは性格を異にしている事が分かる。
もともとスサノオは、南方から暖流に乗ってやって来た海神系の神という説がある。
父・イザナギがスサノオに大海原を治めるように命じた事も、このような性格を反映しているとも考えられる。

「スサノオ」の名前の意味

スサノオの「スサ」は「凄まじい」「荒(すさ)ぶ」といった意味を持つと云われ、荒ぶる勇ましい神である事を示す。
スサノオの「凄まじさ」は相当なモノで、イザナギに命じられた海原の統治も放置して母に会いたいと泣き叫び、姉アマテラスに会いに高天原に行けば侵略を疑われて制止され、高天原に入る事を許されれば、田を壊し、汚物を撒き散らすなど、やりたい放題の乱暴を働く有様だった。

高天原を追放される

スサノオの所業に我慢の限界を迎えたアマテラスが天戸岩に閉じ籠ってしまった。
アマテラスが隠れた事で世界は闇に包まれたが、その後、神々の協力によってアマテラスが天岩戸から出てきて、世界に光が戻った。
そこで今度は八百万の神々は、アマテラスの岩戸隠れの原因を作った張本人、スサノオの処遇について話し合った。
その結果、スサノオには贖罪の為に沢山の貢物を奉納させ、ヒゲと手足の爪を切った上で、高天原から追放される事になった。 (貢物を献納したり、ヒゲや爪を切ったりするのは刑罰の一つで、古代社会では、そうする事によって罪や穢れが祓い清められると考えられていた。)

スサノオが地上に農作物をもたらす

あるとき、スサノオは食物の神であるオオゲツヒメのもとを訪れ、食事を作るように求めた。
これに対してオオゲツヒメは、鼻や口などの体内から様々な食べ物を取り出して、これを調理してスサノオに供えた。
しかし、食材が体内から出て来た物だと知ったスサノオは激怒し、その場でオオゲツヒメを殺してしまう。
その時、オオゲツヒメの頭からが生まれ、両目からはが生え、両耳からはが生え、鼻からは小豆、下半身からは大豆が生じたという。
これが穀物の起源である。
この後、スサノオは穀物の種子を持ち、地上に降り立つが、別の神かと見紛うほどの活躍を見せるようになる。

日本書紀による別の説

日本書紀と古事記では穀物の起源が事なる。
古事記では先に記述したとおりだが、日本書紀ではスサノオとツクヨミの立場が入れ替わっている。
ただし、内容に関してはほぼ同じである。
いずれにせよ、五穀・農産物の種子を地上にもたらしたのはスサノオである。

ヤマタノオロチ討伐

地上に降りたスサノオがとある女性に出会う

肥川(島根県と鳥取県の斐伊川)に降臨したスサノオは、さめざめと泣く老夫婦と美しい少女に出会う。
スサノオがどうしたのか訳を尋ねると、老人はゆっくりと事情を語り始めた。
老夫婦は国津神のオオヤマツミ(大山津見神:山の神)の子で、アシナヅチとテナヅチといい、娘はクシナダヒメ(櫛名田比売)という名だった。

「ヤマタノオロチ」『日本略史 素戔嗚尊』月岡芳年

「ヤマタノオロチ」『日本略史 素戔嗚尊』月岡芳年

大蛇によって多くの女性が食べられてしまった

老人には8人の娘がいたが、毎年、山からヤマタノオロチ(八岐大蛇)がやって来て、娘を一人ずつ食べてしまったという。
今年もヤマタノオロチがやって来る時期になり、最後に残ったこの娘も食べられてしまう。
それで泣き暮らしているのだという。

八つの頭と尾を持つ大蛇

ヤマタノオロチとは、ホオズキのような真っ赤な目で、一つの胴体に8つの頭と8つの尾をもつ大蛇である。
身体には檜や杉が生え、葛が生い茂っている。
長さは8つの谷、8つの峯に及び、腹のあたりはいつも血が滲んでいるという。

大蛇退治を誓うスサノオ

これを聞いたスサノオは、アシナヅチに自分がその大蛇を倒して娘を救ってやろうと約束する。
そして、首尾よく対峙した暁にはクシナダヒメを娶りたいと申し出た。
アシナヅチとテナヅチは大いに喜び、クシナダヒメを嫁がせる事を約束する。

大蛇を倒す準備に取り掛かるスサノオ

スサノオはさっそくヤマタノオロチ退治の準備に入った。
まず、クシナダヒメに術を掛けて爪櫛(爪形の櫛)に姿を変え、自分のミズラ(結った髪)に刺した。
将来、妻となるべき女性を肌身に付ける事で、護り通そうとしたのだ。
また、爪櫛は邪悪なモノを払う神聖な櫛で、それを身に付ける事で、振りかかる難を振り払おうとしたのだ。
次に、アシナヅチ、テナヅチに、家の周りに垣根を張り巡らし、垣根に8つの門を設けて、門ごとに強い酒(八塩折の酒)を満たした桶を置くように命じた。

ヤマタノオロチが現れる

準備が整い、後はヤマタノオロチの襲来を待ち受けるだけになった。
そして、ヤマタノオロチが現れた。
芳香の漂う酒を見つけたヤマタノオロチは、8つの桶にそれぞれ頭を突っ込んで、酒を飲み始めた。
そして、全ての酒を飲み干すと、大蛇は酔って寝込んでしまった。

見事に大蛇を討ち取ったスサノオ

スサノオは十拳剣(とつかのつるぎ)を抜き、大蛇をズタズタに切り裂いた。
大蛇からは大量の地が流れ出し、肥川に流れ込み、肥川は血の川となって激しく流れた。

三種の神器の一つ「天叢雲剣」を手に入れる

スサノオが大蛇の尾を斬った時、何か堅い物に当たった。
そこでスサノオが剣の先で尾を切り裂くと、中から見事な太刀が出てきた。
この時に出てきた剣が、三種の神器の一つ「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ(草薙剣:くさなぎのつるぎ))」である。
スサノオは後に、天叢雲剣をアマテラスに献上した。

偉大な神へと成長したスサノオ

オロチを退治したスサノオは、クシナダヒメを妻に迎えて出雲に留まり、立派な宮を建てて穏やかな暮らしを送ったという。
宮を建てた時には日本で最初の和歌を詠んだとされ、その時にスサノオは「我が心清々し」と云ったとされる。
手の付けられない乱暴者から、英雄神、文化の神へと大きな成長を遂げたのであった。

全国に勧請されたスサノオを祀る神社

神話の活躍に比例するようにスサノオを祀る神社は数多く、特に出雲にはスサノオが住んだ場所に創建されたという須佐神社、須我神社、八重垣神社などが残る。
関東地方に集中する氷川神社も、出雲を起源とするスサノオを祀る神社だ。

神社界有数の分社数を誇る熊野神社の総本社である熊野本宮大社も、祭神の家都美御子神(けつみみこのおおかみ)をスサノオと同一の神としている。
同社は、和歌山県田辺市の本宮町に鎮座する。
明治の中頃まで、社殿は熊野川中洲の大斎原にあったのだが、旧社地となった現在でも大斎原は日本有数の聖地とされ、訪れる人が絶えない。

スサノオを祀る神社

  • 八坂神社(京都東山区祇園町)
  • 氷川神社(埼玉県大宮市高鼻町)
  • 津島神社(愛知県津島市神明町)
  • 熊野本宮大社(和歌山県東牟婁郡本宮町)
  • 日御崎神社(島根県簸川郡大社町日御崎)
  • 須佐神社(島根県簸川郡佐田町宮内)

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