扇風機

扇風機の歴史

扇風機といえば夏の暑さを潤すのに欠かせない家庭のパートナー。
現代では夏の風物詩でもあり、家電の定番でもある扇風機。
以外にも日本では、江戸時代には既に団扇を複数枚使った手回し扇風機が作られていたという。
扇風機の歴史をみてみる。

江戸時代の扇風機

江戸時代の扇風機

江戸末期に人力扇風機が誕生

貴族や武将が使ったうちわが、風を送る日常の生活道具に変身したのは江戸時代に入ってからだった。
現在全国生産の9割を占める「丸亀うちわ」には寛永10年(1633年)が始まりという説がある。
金比羅大権現の別当が参詣土産として「渋うちわ」を提案したそうだ。
木版技術の発達で量産化が可能になり藩も後押しした。
手軽で身分を問わず幅広い階層で利用された。

江戸時代にはあまり流行らなかった

江戸時代末期には人力扇風機も小説の挿絵に登場している。
筒にうちわを6枚付けて手回しで風を送る簡単なものだが、あまり普及はしなかったようだ。

復元された江戸時代の扇風機

復元された江戸時代の扇風機

電気扇風機の登場

世界初の電気扇風機は19世紀後半、モーターの発明とほぼ時を同じくしてアメリカで発売開始された。
直流に執着し、直流による発送電を行っていたトーマス・エジソンは直流モーターの扇風機を発売する。
後に交流発送電が主流になるにつれて、交流式モーターのものが主流となった。

日本の電気扇風機の歴史

当時は「電気扇」「電扇」などと呼ばれていた電気扇風機が日本に初めて輸入されたのは1893(明治26)年だった。
翌1894(明治27)年に、芝浦製作所(東芝の前身)は直流エジソン式電動機の頭部に電球をつけた日本初の電気扇風機を開発した。
白熱電球が登場して間もないころに、スイッチ操作一つで、頭部に電灯が灯り、同時に風が出る扇風機は、真っ黒で分厚い金属の羽をつけた頑丈なものだった。
しかし、技術的な面や使い勝手は高価な輸入品には及ばなかったため、工夫を重ね、1916(大正5)年には品質の優れた、一般庶民にも手が出る低価格の芝浦扇風機を製造し、人気の家電アイテムになっていった。

日本初の電気扇風機

1894(明治27)年に作られた日本初の電気扇風機
芝浦製作所(現 東芝)

大正時代に扇風機が大量生産

1913年(大正2年)には、川北電気企業社から12インチの交流電気扇風機が発売された。
大正時代には三菱電機、富士電機、日立製作所などのメーカーも参入し、本格的に国産扇風機が量産され始めた。
当時は30cmと40cmの首振り形と固定型があり、単相誘導電動機の擬似三相式起動法によって大量生産を狙った。
さらに1920(大正9)年には、東海道線の急行列車向けに直流扇風機を製造し、換気のために窓をあけるしかなかった長距離乗車の客から大いに好評を得た。

大正後期の扇風機

大正後期の扇風機
芝浦電気扇 扇風機 箱付 芝浦製作所(現 東芝)

用途にあわせて多くとタイプが生まれる

アイロンと並んで最も早く国産化されたという電気扇風機。
関東大震災で工場が全焼して生産が止まったこともあったが、景気の回復とともに需要も拡大し、卓上用、天井用、換気用、鉄道車両用など製作アイテムも増えた。
昭和初期には川崎造船所(川崎重工業の前身)が、左右だけで無く上下の首振りも同時にする、2軸リンクの扇風機を発売している。

戦時中はしばし生産停止

こうして扇風機は、製品の開発、機種の充実、生産の拡大が行われ、次第に家庭に普及していったものの、第2次世界大戦が始まると外国家電の輸入は止まり、国産品も1940(昭和15)年7月7日から実施された『贅沢品製造販売制限規則』によって製造が中止された。
イラン、イラク方面への輸出がわずかに行われていたが、終戦までは海軍艦船用直流扇風機の製作に限られていた。

戦後、再び扇風機が作られる

戦後の1946(昭和21)年になると、まず進駐軍向け、輸出向けに生産が始まった。
翌1947(昭和22)年には国内一般向けの扇風機の生産、販売が再開され、以降、毎年新しい機能を搭載した新機種の開発が行われ、業界に大きな刺激を与えるようになった。

国とともに近代化を果たす扇風機

その後、高度成長期に入ると、扇風機の普及率は1961(昭和36)年~1963(昭和38)年の3年間で29%から48%へと急上昇した。
この間、ユーザーの便利性を追究して無段変速装置、ワンハンド俯仰角調節装置、首振機構内蔵、ガードクリップ止めなどを採用した。
その後も、風が断続するウィンク扇、和風扇、ガードレス扇、和室用アンドン扇、さらに羽根前面着脱装置、全面首振角度調整装置の採用を始め、カラー化を行い、1967(昭和42)年には分解包装のハンディパックを採用するなど、流通面でも大きな改革をもたらした。

風物詩となった扇風機

扇風機は家屋や店、鉄道車両内などで広く利用され、夏の風物詩のひとつともなった。詩歌で「扇風機」は夏を示す季語である。
夏目漱石の日記でも「扇風機が頭の上で鳴る」などと書かれている。

一時期、エアコンにシェアを奪われる

高度成長期、昭和後半〜平成期に冷房機能を備えたエアコンが低価格化し普及すると、扇風機が使用される機会が減った。
しかし、2011年の東日本大震災以降、節電、省エネルギー、エコロジーなどが強く意識されるようになるとともに扇風機の良さが再評価され、再び使用台数・販売台数が伸びてきた。

今後の進化に期待

2017年現在、従来の誘導電動機よりも効率が良く、消費電力が小さいブラシレス直流モーターを採用した扇風機が多数登場している。


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