反EUの拡大

反EUの拡大

地域統合の先進例だったEUだが、債務危機と難民危機で足並みの乱れが顕在化する。
さらに、イギリスのEU離脱が確定した事による、離脱ドミノの発生が警戒されている。
経済不振が続く各国に対し、EUが課した厳しい緊縮財政を機に、反EU感情が高まっている。
シリア内戦による、大量の難民流入も問題となっており、EUの崩壊が危惧される。

脅かされるEUの統一

イギリスのEU離脱が確定

2016年6月、イギリスで行われた国民投票でEU離脱派が僅差で勝利した。
いわゆる「Brexit(ブレグジット)」が現実のものとなり、関係各国・機関はEU離脱ドミノにより、EUの統一が脅かされる事になる。
※Brexit:Britain(ブリテン)とexit(出口)を組み合わせた造語

債務危機発覚により、EUの足並みが乱れ始める

発足以来、加盟国の拡大と統合の深化を進めてきたEUだが、2010年代に入ると足並みの乱れが目立ち始める。
まず、噴出したのは、2009年に明らかになったギリシャの粉飾決算に端を発する欧州債務危機問題である。
翌10年以降、国際通貨基金(IMF)やEU、欧州中央銀行(ECB)による金融支援が行われたが、ドイツをはじめとする支援国が課した厳しい緊縮財政に、支援を受ける側のPIIGS諸国(ホルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)で反EU感情が高まった。

ギリシャのユーロ圏離脱の可能性

特にギリシャでは、緊縮財政による国内経済の疲弊に苦しんだ結果、2015年1月の総選挙で国民は反緊縮を掲げる急進左派連合を選択する。
首相となったチプラスは、7月、EUが追加金融支店の条件として提示した緊縮財政プログラムの可否を国民投票に付した。
実質的にギリシャのユーロ圏離脱(Grexit(グレグジット))を問うとされたこの国民投票で、ギリシャ国民は否を選択する。
最終的にはチプラスが国内の反発を覚悟のうえで緊縮財政を受け入れたものの、いまだにGrexitの可能性はくすぶっている。

反移民・反EU運動

難民問題の浮上

この債務危機に前後して浮上したのが難民危機だ。
EUは人権擁護の理念から難民・移民を受け入れてきたが、15年には内戦が激化するシリアからの難民が急増する。
同年中には100万人もの難民が押し寄せ、対応が出来なくなったハンガリーが同年9月に国境沿いにフェンスを設置して難民流入を拒否するなど、EUの理念を揺るがす対応がとられた。

反移民・反EUを掲げる政党が各国で躍進

また、移民・難民の大量流入による失業拡大への不安や、相次ぐイスラム過激派によるテロもあって、フランスの国民戦線やオランダの自由党、ドイツのAfD(ドイツの為の選択肢)など、反移民・反EUを掲げる極右政党が欧州各国で躍進する。
イギリスでの国民投票の結果を受けたこれらの政党が勢いづく事で、EUの空中分解が懸念されているのだ。


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