シリア内戦

シリア内戦

「ISIL(自称イスラム国)」を台頭させ、28万人以上の死者と多数の難民を出したシリアの内戦。
アメリカやロシア、中国などの関係国の思惑が絡み、内戦は泥沼化、周辺地域を大混乱に陥れた。
2017年現在、シリアでの混乱は続いている。

シリアをめぐるアメリカの動き

反政府デモによる混乱が拡大し、内戦へ

チュニジアで始まったアラブの春はシリアにも波及し、2011年3月には大規模な反政府デモが起きた。
父子2代にわたって強権支配を続けるアサド大統領がこのデモを弾圧すると、自由シリア軍やクルド人などの反政府勢力が武装闘争を始め、シリアは内戦状態に陥る。

アメリカの政策がアサド政権を延命させた

内戦は、アサド退陣を求める米欧が反政府勢力を支援し、アサド政権を支持するロシアや中国が国連安全保障理事会の制裁決議を阻止するという構図で長期化した。
そして、2013年には、アサド政権が自国民に化学兵器攻撃を行った事が判明。
人道危機を前に、米欧による武力介入の機運が高まった。
しかし、オバマ米大統領は土壇場で武力介入を見送ってしまう
この決定は米国ないの保守派から弱腰と非難され、アサド政権を延命させただけでなく、ウクライナや南シナ海におけるロシア・中国の行動を助長させたとまで、指摘された。
こうした混乱の長期化は「ISIL」の台頭を許し、シリア内戦はアサド政権、反政府勢力、ISILが入り乱れる泥沼と化していった。

シリアの混乱が周辺に波及

信仰を利用して勢力を拡大したISIL

ISILの前身は、イラク戦争後の混乱で成長したイスラム教スンニ派の過激組織だ。
シリア内戦後は同国北部の油田を制圧して石油を密輸した他、支配地域での徴税などで資金を獲得。
同時にインターネットでジハード(聖戦)を訴え、約2万人の外国人戦闘員を集めて支配領域を広げた。
そして、2014年6月にイラク第二の都市モスルを陥落させると、ISILの指導者であるバグダディが国家の樹立を宣言する。
自ら預言者ムハンマドの後継者・カリフを名乗り、全世界のイスラム教徒に忠誠を求めたのである。

交錯するアメリカとロシアの思惑

このISILを中心としたイスラム過激派のネットワークがアフリカやアジアへと拡大する兆しを見せ始める。
これを受け、米欧を中心とした有志連合は、2014年8月からISILに対して空爆を開始する。
2015年10月からはロシアも独自にISILへの空爆を開始するが、アサド政権を支援すべく反政府勢力にも攻撃を加えて混乱を助長する。

難民の増加や、隣国での戦争など、混乱が続く

11月にはトルコ軍がロシア軍機を撃墜する事件が発生して両国の対立が表面化する(現在は沈静化)。
そのトルコ国内ではテロが頻発し、2016年7月にはクーデター未遂事件も起きている。
この間、シリア難民がヨーロッパへ押し寄せた。
また、シーア派の大国イランスンニ派の大国サウジアラビアイエメンを舞台に代理戦争を行うなど、中東情勢を混迷の度を深めている。


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