カヤ(茅)

茅の歴史

茅(かや)は、古くから屋根材や飼肥料などに利用されてきた、細長い葉と茎を地上から立てる草本植物で、イネ科やカヤツリグサ科の草本の総称。
カヤと呼ばれるのは、細長い葉と茎を地上から立てる一部の有用草本植物で、代表種にチガヤ、スゲ、ススキ、ヨシ(アシ)がある。
厳密には「茅」という植物は無く、ススキを特定的に意味することもある。

ススキ

ススキ

茅の利用方法

イネやムギなどの茎(ワラ:藁)は水を吸ってしまうのに対し、茅の茎は油分があるので水をはじき、耐水性が高い。
その耐水性の高さから、茅の茎は屋根を葺くのに好適な材料となり、以前の日本では最も重要な屋根材として用いられた。
屋根を葺くために刈り取った茅をとくに刈茅(かるかや)と呼び、これを用いて葺いた屋根を茅葺(かやぶき)屋根と呼んだ。
その他かつての農村では牛など家畜の飼料、田畑の肥料、燃料などさまざまな利用があった。
現在でも、菅笠をはじめとする各種民芸品や、茅の輪(ちのわ)などが茅を編んで作られている。
このように重要であった茅を確保するために、古来の農村では、集落周辺の一定地域を茅場とし、毎年火を入れて森林化の進行を防ぎ、そこから茅を収穫することが普通であった。

茅葺屋根

茅葺は世界各地でもっとも原初的な屋根であり、縄文時代には茅を用いた屋根だけの住居が作られていた。
弥生時代でもほとんどの建物の屋根は茅葺だったと思われ、“茅”が如何に人の生活に必要なモノだったか分かる。
茅葺屋根は雨漏りにも強く、通気性・断熱性に優れる、雨音が小さいなどの“家”としての役割を果たすのに十分な性能を持っていたの。
ただし、火災に弱く、台風などの風に対しては無力であった。

茅葺屋根

茅葺屋根

茅の代表種

ススキ

ススキは、十五夜の月見にハギ(萩)とともにススキを飾ることが多く、古来より秋の七草の一つに数えられている。
『万葉集』などにもススキの名前が記されており、只の草として扱われていた訳ではない。
なお、未成熟の穂を食用とする地域もある。
東京・雑司ヶ谷鬼子母神では、ススキの穂をミミズクの姿に作った「すすきみみずく」が有名。

チガヤ

チガヤは様々な利用も行われた。
そのため古くから親しまれ、古名はチ(茅)であり、花穂はチバナまたはツバナとも呼ばれ、『古事記』や『万葉集』にもその名が出る。
この植物はサトウキビとも近縁で、植物体に糖分を蓄える性質がある。
外に顔を出す前の若い穂は、噛むと甘く、子供がおやつ代わりに噛んでいた。
地下茎の新芽も食用となった事があり、万葉集にも穂を噛む記述がある。

ヨシ(アシ)を使った船

日本神話では、イザナギとイザナミとの間に生まれた最初の神様であるヒルコが、葦舟に乗せられて海に流されたと「古事記」に記されている。
不思議な話だが、日本神話によると、日本列島が出来るより前に、茅の一種である「葦(ヨシ:アシ)」が存在していたというわけだ。
実際、世界では日本の歴史が始まるよる古くからヨシを使った船が造られていた。
もしかした大昔の日本人たちは、ヨシが日本の外にも存在したと知っていたのかも知れない。

ヨシ(アシ)

ヨシ(アシ)


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