縄文土器と土偶

縄文土器と土偶

縄文土器は煮炊き用として発明され、縄文人の食生活に変化をもたらした。
その一方で、独特の様式美「縄文の美」が今も人々を魅了している。
また、縄文時代には土偶や石棒といった道具が作られたが、これらは神々に感謝や祈りを捧げる際に用いられた。
土偶は壊す事が当たり前であったようだ。
縄文土器・土偶などの縄文人が作った道具をみてみる。

縄文土器

縄文土器が今も多くの人々を魅了しているのは、その豊かな表現美、装飾や形状にある。
現代社会ではモノの画一化が進んでいるが、縄文土器にはそれぞれに個性が際立っている。

作り手の美的感覚が表現された縄文土器

縄文土器の装飾が多彩なのは、土器の材料が粘土である事が大きい。
石や骨角器と違って形や大きさが変えやすく、作り手の創意工夫が現れやすいためだ。
煮炊きの道具として生み出された縄文土器は人々の食生活に大きな変化をもたらしたが、芸術面でも新たな道筋を与えたのだ。

装飾が豊かだった縄文土器

縄文土器にあしらわれている文様の入れ方は様々で、縄に棒を巻き付けて粘土を転がす方法もあれば、棒そのものを加工して転がすやり方もある。
文様は年代を経るごとに複雑化し、口縁部に粘土紐を張り巡らせた隆起線文土器も登場する。
また、舞い踊る人物とおもわれるモノ、イノシシやヘビなどをモチーフにした動物文様なども登場し、縄文土器の装飾は隆盛を極めた。
縄文土器の文様からは人々の喜怒哀楽や畏れ、祈りといった精神世界を伺う事が出来る。
新潟県の遺跡などで出土した火焔文の土器は燃え盛る炎のようなモノをモチーフにしているが、これも縄文人の情熱や怒りを現わしていたと考えられる。

文様の起源や意味は謎

縄文土器の文様の起源や意味に関して確たる定義は存在しておらず、学者によってとらえ方は異なる。
縄文文化はとても謎が多く残されているのだ。

徐々に文様はシンプルに変化

その他、独創的な文様を持つ縄文土器だが、加飾的な文様は中期をピークに省略化の道を辿っていく。
土器を彩った隆帯文も簡素化し、曲線的な沈線と細かい縄目を中心とした平面的な文様構成が増えていった。
後期後半から晩期に掛けての土器の表面には微粒の化粧粘土が塗られ、丁寧に磨かれていた。

製作技術が向上し、用途にあわせた土器が誕生

更に晩期になると土器の器種は飛躍的に増加し、用途に応じて作り分けされるようになった。
これは土器を製作する技術が向上し、生活様式が多様化した事を覗わせる。
土器は簡素化の一途をたどり、やがて弥生土器の時代を迎える事になる。

土偶や土版、石の道具

用途に謎が多い「第二の道具」

土偶や石棒の用途だが、ケガや災害などを恐れた縄文人たちが、祈りを捧げる為に造り出した、祭祀用の道具だと考えられている。
石鏃や土器といった狩猟採集に用いられた道具と違い、土偶や石棒には明確な用途が説明が付かない為、一概に“道具”といっても分類が必要である。
石鏃や土器を「第一の道具」、土偶や石棒を「第二の道具」などと分類する場合もある。

土偶には女性像が多い

土偶の多くはくびれた腰、豊かな乳房と臀部をもつ女性像である。
膨らんだ腹部、みぞおちから腹部に掛けて目立つ正中線によって、妊婦である事を表している土偶も多く発見されている。

極めて人類史的に貴重な縄文土偶

女性像は多産(子孫繁栄)と豊穣を象徴する存在として、崇拝と祈りの対象となる。
これ自体は世界的に珍しい事ではないが、複雑で極めてユニークな造形と1万年以上もの歴史性を有した人形は、縄文時代の土偶の他には存在しない。

意図的に壊された土偶の意味とは?

現在までに発見された土偶の数は約1万5000体(国立歴史民俗博物館の調査)だが、その大半は何かしらの形で欠損している。
これは、病気や傷害などの回復を祈る為、その部位の一部分を故意に壊したと考えられている。

用途に謎が残る石棒

土偶とともに、祭祀の道具に用いたと考えられているのが石棒である。
石棒は当初、手のひらに載る程度の大きさだったが、中には長さ2メートルを超えるモノも存在する。
縄文土器や土偶と同様に、形も多種多様で、模様が在ったり、ヘビのような形状をしていたりするモノもある。
これらの石棒は、地道に石をコツコツと削る事でしか作れなかった為、かなりの時間を要したと思われる。
石棒が具体的にどのように使用されたかは定かではないが、多くは火に掛けられ倒れた状態で出土している。
その為、住居内や広場などに立てて祈りを捧げ、最終的には焼いて捨てていたのかも知れない。

その他の縄文時代に作られた道具

土偶や石棒の他にも、土版や岩盤、土面、石冠、石刀、イノシシなどの動物を模した土製品など、正確な用途が明らかでない縄文時代の遺物は沢山ある。
なかには北陸・東海道地方を巡幸中の明治天皇に献上されたという御物石器も存在する。


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