記紀の植物

古事記と日本書紀の植物

日本最古級の文献資料『古事記』と『日本書紀』。
これらの書物にはどんな植物が記してあるのか?
当時と今とでは、人々の暮らしや植物との関わりは全く違うモノだと思われる。
神話を踏まえた日本最古の歴史において人々が、どんな植物と接していたのかを探る。
※当ページは作成中、今後の更新に期待して頂たい

当時、重宝されていた植物

記紀(古事記と日本書紀)にみられる植物の代表例としては「五穀」代表される稲・麦・粟・大豆・小豆・稗や、葦などの茅葺屋根の材料となったモノ、また、現代でも椿など観賞用として用いられるものなどが上げられる。
また、ヒガンバナなどの有史以前に日本に渡来してきたとの説があるのに記述されていない植物もある。
日本人の身の回りに存在する植物は、意外にも時代とともに大きく様変わりして来た事が窺える。

古事記の植物

古事記に登場する植物を一覧表。

植物名 標準和名 科名 備考
葦牙(あしかび) ヨシ イネ科 葦の芽の意
蒲子(えびかずらのみ) エビヅル ブドウ科 ヤマブドウの説あり。葡萄の実の意。
笋(たかむら) 竹の子 イネ科
桃子(もものみ) モモ バラ科
阿波岐(あはき) 未詳
波波迦(ははか) ウワミズザクラ バラ科 朱桜(かにわさくら)のこと
賢木(さかき) サカキ ツバキ科
白丹寸手(しろにぎて) コウゾ クワ科 楮でつくった布
青丹寸手 アサ クワ科 麻でつくった布
日影 ヒカゲノカズラ ヒカゲノカズラ科 蘿(さがりごけ)の説あり
真拆葛(まさきかづら) テイカカズラ キョウチクトウ科 ツルマサキの説あり
小竹葉(ささば) ササ類 イネ科
イネ イネ科
アワ、キビの類 イネ科
小豆 アズキ マメ科
オオムギ イネ科
大豆 ダイズ マメ科
赤加賀智(あかかがち) ホオズキ ナス科
蘿(こけ) コケ
ヒノキ ヒノキ科
榲(すぎ) スギ スギ科
蒲黄(がまのはな) ガマ ガマ科
牟久の木(むくのき) ムクノキ ニレ科
ぬば玉 ヒオウギ アヤメ科
栲(たく) コウゾ クワ科
あたね 未詳 アカネの説あり
一本薄(ひともとすすき) ススキ イネ科
苧(むし) カラムシ イラクサ科
羅摩(かがみ) ガガイモ ガガイモ科
楓・香木(かつら) カツラ カツラ科
海布(め) 海藻(アラメ・ニギメ・ワカメなど)類の総称 総名
海、薦(こも) 未詳 アヲサ・ホンダワラの説あり。
波士(はじ) ヤマハゼ ウルシ科
タケ イネ科
樟(くす) クスノキ クスノキ科
立柧?(たちそば) ニシキギ ニシキギ科
?(いちさかき) ヒサカキ ツバキ科
アワ イネ科
韮(かみら) ニラ ユリ科
椒(はじかみ) サンショウ ミカン科
白檮(かし) カシ ブナ科
佐韋(さゐ) ヤマユリ ユリ科
久須婆(くすば) クズ マメ科
檳榔(あぢまさ) ビロウ ヤシ科
橘・登岐士玖能迦玖能木實(ときじくのかくのこのみ) ミカン(タチバナ) ミカン科
熟?(ほぞち) マクワウリ ウリ科 ホゾチ(熟した瓜のこと)で記載
赤檮(いちひ) イチイガシ ブナ科
黒葛(つづら) ツヅラフジ ツヅラフジ科
比比羅木(ひひらぎ) ヒイラギ モクセイ科
蒜(ひる)・野蒜(のびる) ノビル ユリ科
マツ類 マツ科 「尾津の前の一つ松」として記載
稲幹(いながら) イネ イネ科
野老蔓(ところづら) ヤマノイモ ヤマノイモ科
小竹(しの) シノ(ヤダケ・メダケの類) イネ科
植ゑ草 水草類の総称
真木 未詳 (すぎ)・槇・檜の説あり。檜の枕詞。
瓠(ひさご) ヒョウタン ウリ科
歴木(くぬぎ) クヌギ ブナ科
シイ ブナ科
ヒシ ヒシ科
クリ ブナ科
花橘 ミカン(タチバナ) ミカン科
蓴(ぬなは) ジュンサイ スイレン科
佐那葛 サネカズラ マツブサ科
梓(あづさ) ミズメ カバノキ科
檀(まゆみ) マユミ ニシキギ科
藤・布遲(ふぢ) フジ マメ科
一節竹(ひとよだけ) 未詳
菘菜(あをな) カブ アブラナ科 タカナの説あり
御綱柏(みつながしは) カクレミノ ウコギ科
鳥草樹(さしぶ) シャシャンボ ツツジ科
椿 ツバキ ツバキ科
大根(おおね) ダイコン アブラナ科
カヤツリグサ科
ササ類 イネ科
サクラ類 バラ科
多遅花(たぢひ) イタドリ タデ科
マコモ イネ科
山多豆(やまたづ) ニワトコ スイカズラ科
ケヤキ ニレ科
荻(すすき) ススキ イネ科
ハス スイレン科
榛(はりのき) ハンノキ カバノキ科
三枝 ミツマタ ジンチョウゲ科 ヤマユリの説あり。
チガヤ イネ科

日本書紀の植物

日本書紀に登場する植物を一覧表。

植物名 標準和名 科名 備考
葦牙 ヨシ イネ科
クワ クワ科
五穀 稲・麦・粟・稗・豆
蔓草類の総称
蒲陶(えびかづら) エビヅル ブドウ科
筍(たかむな) 竹の子 イネ科
モモ バラ科
粟・禾 アワ イネ科
稗(ひえ) ヒエ イネ科
イネ イネ科
麦(むぎ) オオムギ イネ科
大豆(まめ) ダイズ マメ科
小豆(あづき) アズキ マメ科
檍(あはき) 未詳
坂樹 サカキ ツバキ科
白和幣 アサ クワ科 麻でつくった布
青和幣 コウゾ クワ科 楮でつくった布
蘿(ひかげ)、石松 ヒカゲノカズラ ヒカゲノカズラ科
穀(たなつもの)
野槌(のつち) 萱草の類
野薦(のすず) スズタケ イネ科 野薦(のすすき)で萱・薄・篠の類とも.
真拆葛 テイカカズラ キョウチクトウ科
篠(しの) ササ類(ヤダケ・メダケの類) イネ科 篠は小竹なり、此をば斯奴といふと注あり
赤酸漿 ホオズキ ナス科
ヒノキ ヒノキ科
スギ スギ科
ぬば玉 ヒオウギ アヤメ科
(まき) イヌマキ マキ科
クスノキ クスノキ科
かがみ ガガイモ ガガイモ科
マツ類 マツ科
カシワ ブナ科 カヤノキ、ヒノキ科の総称とも.
杜木(かつら)・杜樹 カツラ カツラ科
山野に生える小さい雑木.
コウゾ クワ科
沖つ藻・も 総名
梔(はじ) ヤマハゼ ウルシ科
タケ類の総称 イネ科
シイ ブナ科
立柧ば(たちそば) ブナ ブナ科 ソバノキはブナの古名.
櫟(いちさかき) イチイガシ ブナ科
天吉葛(あまのよさづら) 未詳
韮(かみら) ニラ ユリ科
山椒(はじかみ) サンショウ ミカン科
葛・黒葛(かづら) 蔓草類の総称
非時香菓(ときじくのかくのみ)・橘 ダイダイ ミカン科
賢木 サカキ ツバキ科
海石榴(つばき) ヤブツバキ ツバキ科
カシワ ブナ科
マコモ イネ科
白橿(しらかし) シラカシ ブナ科
真葛 クズ マメ科
歴木 クヌギ ブナ科
一箇蒜(ひとつひる) ニラ・ニンニクの類 ユリ科 鱗茎が一個なので、ヒトツヒル.食用.
ガマ ガマ科
荻(すすき) ススキ イネ科
水菜(みなは) 水草や海藻
ヒシ ヒシ科
ケヤキ ニレ科
ノビル ユリ科
花橘 カラタチ ミカン科 春に花咲く橘はカラタチ.
クリ ブナ科
蓴(ぬなは) ジュンサイ スイレン科
橿 カシ ブナ科
菌(たけ) 菌、キノコ 担子菌類のきのこ.
なづの木 海藻の類
ミズメ カバノキ科
マユミ ニシキギ科
茅茨(かや) カヤの類 屋根などを葺く材.
匏(ひさご) ヒョウタン ウリ科
御綱柏 カクレミノ ウコギ科
大根(おおね) ダイコン アブラナ科
茅・浅茅 チガヤ イネ科
ヨシ・ススキなどの総称 イネ科
桜・花 サクラ類 バラ科
虎杖・多遅花(たぢひのはな) イタドリ タデ科
蘭(あららぎ) ノビル ユリ科 フジバカマの意もあり.
浜藻・奈能利曾毛 ホンダワラ
モモ バラ科
をみなめ アサザ ミツガシワ科 転じて、女性の意.
ハンノキ カバノキ科
ダイダイ・ミカン・カラタチなどの総称 ミカン科
蘆(え)・葦 ヨシ イネ科
つり メハジキ シソ科
草葉(かや) 茅・萱・薄の総称
ヤナギ類 ヤナギ科
スギ スギ科
ウリ科
ユリ科 「秋葱」で秋の葱は一茎の中に二本の茎が包まれていることがあるので、「身の二ごもり」の比喩に用いる.
山野に生える小さい雑木.
暑預(うも) ヤマイモ ヤマノイモ科
真木 ヒノキ ヒノキ科
まさき葛 ツルマサキ・テイカカズラの類
荊(うばら)
朴(えのき) エノキ ニレ科
白膠木(ぬりで) ヌルデ ウルシ科
赤檮(いちひ) イチイガシ ブナ科
沈水 沈香ともいう香木の一種.
スモモ バラ科
ハス スイレン科
芝草(しそう) 霊芝
百合 ユリ
曼椒(ほそき) サンショウ ミカン科
栴檀 「栴檀香」で栴檀を材にする香.
茨(しり) イバラ
水葱(なぎ) ミズアオイ ミズアオイ科
セリ セリ科
支子(くちなし) クチナシ アカネ科
莞子(かま) ガマ ガマ科
白朮(をけら) オケラ キク科
紵(からむし) カラムシ イラクサ科 布を作る植物.
箭竹(やたけ) ヤダケ イネ科
ナシ バラ科
蕪菁(あをな) カブ アブラナ科
クリ ブナ科
はねず ニワウメ バラ科
すげ スゲ
かえ カエ
うるし ウルシ ウルシ科

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