別天津神

別天津神

別天津神(コトアマツカミ)は、『古事記』において、天地開闢の時にあらわれた五柱の神々の事。
記紀神話(日本神話)の最初に出て来る神々をみてみよう。

性別がない五柱の神々

『古事記』の神話の冒頭は「天地初めて発くるときに、高天原に成りませる神の名は。次にタカミムスヒ。次にカミムスヒ。この三柱の神は、みな独神と成りまして、身を隠したまふ」とある。
ここに登場するアメノミナカヌシ(天之御中主)、タカミムスヒ(高御産巣日)、カミムスヒ(神産巣日)の三柱が日本神話で最初に世界に現れた神々という事になる。
書かれている通り、『古事記』では先ず高天原という世界が先に在り、そこに神々が誕生したという順番になっている。
つまり日本神話には、一神教のように世界を“無”から生み出す絶対的な「創造神」は存在しないのだ。
なお、独神とは「男女の性別が無い神」の事である。

最初に現れた「造化の三神」

この三柱の神々は総称して「造化の三神」と呼ばれるが、個別にみるとアメノミナカヌシは天の中心の主の意であり、文字通り宇宙の中心を表す神だと思われる。
よく似た名前のタカミムスヒとカミムスヒは、どちらも「産霊(ムスヒ)」の力を象徴した神である。
産霊とは神道の概念で、万物を生み出し育む霊力の様なモノを意味する。
タカミムスヒは別名を「高木神(たかぎのかみ)」ともいい、アマテラスとともに高天原を導く神に、逆にカミムスヒはオオクニヌシらと地上の神々を導く神となり、度々神話に登場する。

アメノミナカヌシ(天之御中主)
至高の神
タカミムスヒ(高御産巣日)
生産・生成の「創造」の神。
神産巣日神と対になって男女の「むすび」を象徴する神。
カミムスヒ(神産巣日)
生産・生成の「創造」の神。
高御産巣日神と対になって男女の「むすび」を象徴する神。

続いて現れた「二神」

造化の三神に続いて、未完成の形が定まらない国土に生まれたのが、ウマシアシカビヒコジ(宇摩志阿斯訶備比古遅)とアメノトコタチ(天之常立)の二神である。
それぞれ葦の芽のように力強くそそり立つ霊力と、天が定まった事を象徴した神で、この二神も独神として出現と同時に見を隠している。

ウマシアシカビヒコジ(宇摩志阿斯訶備比古遅)
活力の神
アメノトコタチ(天之常立)
天の神

別天津神

ここまでの五柱の神は、いずれも天地の誕生を神格化した特別な神で「別天津神」と呼ばれる。
「別天津神」が最も尊い神々であるといえるが、多分に観念的な存在である為に庶民の間で広く信仰されるには至らなかった。
別天津神の次に神世七代の神が現れている。

アメノミナカヌシと妙見

後の時代、夜空の中心である北辰(北極星とそれを守る北斗七星)を崇める「妙見信仰」が伝わる。
天の中心という事から、アメノミナカヌシと妙見は同一の神と考えられるようになっていく。
そして、明治の神仏分離令で妙見神を祀っていた千葉神社など多くの神社がアメノミナカヌシを祭神とするようになった。

神世七代

神世七代には、別天津神と違い性別、陽神(男神)と陰神(女神)がある。
初めは抽象的だった神々が、次第に男女に別れ異性を感じるようになっていき、最終的には愛を見つけ出し夫婦となる。

『古事記』における神世七代

『古事記』では、別天津神の次に現れた十二柱七代の神を神世七代としている。
最初の二代は一柱で一代、その後は二柱で一代と数えて七代とする。
二柱で一代の神は、左側が男神、右側が女神である。

  • クニノトコタチ(国之常立)
  • トヨクモノ(豊雲野)
  • ウヒヂニ(宇比邇)、スヒチニ(須比智邇)
  • ツヌグイ(角杙)、イクグイ(活杙)
  • オホトノジ(意富斗能地)、オオトノベ(大斗乃弁)
  • オモダル(淤母陀琉)、アヤカシコネ(阿夜訶志古泥)
  • イザナキ(伊邪那岐)、イザナミ(伊邪那美)

日本書紀における神世七代

『日本書紀』の本書では、天地開闢の最初に現れた以下の十一柱七代の神を神世七代としている。

  • クニノトコタチ(国常立)
  • クニサツチ(国狭槌)
  • トヨグモヌ(豊斟渟)
  • ウイジニ(泥土煮)、スイジニ(沙土煮)
  • オオトノジ(大戸之道)、オオトマベ(大苫辺)
  • オモダル(面足)、カシコネ(惶根)
  • イザナギ(伊弉諾)、イザナミ(伊弉冉)

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